副院長ブログ

「家での耳掃除」は今すぐやめて大丈夫!?外耳炎を防ぐ正しい耳のケア

こんにちは!入谷耳鼻咽喉科の副院長 入谷啓介です。

いつも当院にお越しいただき、ありがとうございます。日々の診察の中で、地域の皆様の耳・鼻・のどの健康をサポートさせていただけることに、いつもやりがいと喜びを感じています。

さて、突然ですが、皆様はどれくらいの頻度で「耳掃除」をされていますか?
「お風呂上がりに毎日欠かさず綿棒でやっている」
「耳がちょっと痒くなると、すっきりしたくてついつい耳かきを手に取ってしまう」

実は、診察室で患者さんとお話ししていると、このように綺麗好きな方ほど、あるトラブルを抱えて来院されるケースが非常に多いのです。そのトラブルこそが、今回のテーマである「外耳炎(がいじえん)」です。

「毎日しっかり耳掃除をして綺麗にしているのに、どうして耳が痛くなるの?」と、不思議そうに、時には少し落ち込んだ様子で質問される患者さんに、私はいつもこうお伝えしています。

「実は、お家での耳掃除は、基本的に全くしなくて大丈夫なんですよ」

この一言を放つと、診察室の空気が一瞬「えっ!?」と凍りつくのを感じます(笑)。長年の習慣を否定されたようで驚かれるのも無理はありません。

今回は、良かれと思ってやっているお家での耳掃除が、なぜ外耳炎を引き起こしてしまうのか、そして耳鼻科医が本音で教える「本当に正しい耳のケア」について、分かりやすくお話ししていきたいと思います。

外耳炎ってどんな病気?その症状と原因

まずは「外耳炎」がどのような病気なのかを簡単にご説明します。
私たちの耳の穴は、入り口から鼓膜までの通り道を「外耳道(がいじどう)」と呼びます。この外耳道の皮膚に炎症が起きてしまった状態が外耳炎です。

外耳炎になると、以下のような症状が段階的に現れます。
〇初期症状: 耳の中がなんとなく痒い、ムズムズする
〇進行期: 耳を引っ張ったり、耳の入り口を押さえたりするとズキズキと痛む
〇重症期: 耳だれ(分泌物)が出てくる、耳が詰まった感じ(耳閉感)がする、聞こえにくくなる

ひどくなると、ご飯を食べるために口を動かしたり、あくびをしたりするだけで、耳に激痛が走るようになります。こうなると夜も眠れず、本当に辛いものです。

では、なぜここに炎症が起きてしまうのでしょうか?原因はとてもシンプルで、「外耳道の皮膚に傷がつき、そこから細菌やカビ(真菌)が入って繁殖してしまうから」です。そして、その傷を作る最大の原因が、他ならぬ「お家での耳掃除」なのです。

なぜ「家での耳掃除」が外耳炎を招くのか?3つの理由

「綿棒で優しくなでているだけだから、傷なんてつけていないはず」と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、耳の穴の中は皆様が想像している以上にデリケートにできています。

お家での耳掃除がNGである理由を、3つのポイントに分けて解説します。

1. 耳の皮膚は「体の中で最も薄い」部類
耳の穴の中の皮膚は、腕や足の皮膚とは比べものにならないほど薄く、例えるなら「熟しきった桃の皮」のように繊細です。そのため、本人は「優しく、心地いい強さ」で触っているつもりでも、硬い耳かきや、一見柔らかそうな綿棒の繊維であっても、簡単に見えない微細なキズがついてしまいます。そのキズに、皮膚の常在菌や指からついた細菌が感染することで、外耳炎が発症します。

2. 耳には驚くべき「自浄作用」が備わっている
実は、耳の穴の皮膚には「自浄作用(自然に綺麗になる仕組み)」があります。耳垢(みみあか)は、耳の奥で作られてそのまま溜まり続けるわけではありません。ベルトコンベアーのように、皮膚が鼓膜側から入り口側へと少しずつ移動する性質を持っているため、耳垢は放っておいても勝手に入り口付近まで押し出されてくるのです。
つまり、人間は本来、自分で耳の奥を掃除しなくても良い構造になっています。

3. 綿棒が「耳垢の押し込み棒」になっている
診察をしていて一番よく見かけるのが、耳垢を綺麗に取ろうとして、逆に綿棒で奥へ奥へと押し込んでしまっているケースです。これを私たちは「壁の泥落とし」と呼んだりしますが、押し込まれた耳垢が固まって塊になり、鼓膜を圧迫して聞こえにくくなったり、最悪の場合は自力で取れなくなって耳鼻科で処置が必要になったりします。

耳鼻科医が推奨する「本当に正しい耳のケア」

「じゃあ、これからどうやって耳の清潔を保てばいいの?」と不安になりますよね。今日から実践できる、正しいケアの方法をお伝えします。

結論から言うと、お家でのケアは「お風呂上がりに、入り口の水分を優しく拭き取るだけ」で100点満点です。

具体的には、以下のルールを意識してみてください。

〇触るのは耳の入り口(外から見える範囲)だけ

〇お風呂上がりに、タオルの角や、綿棒の先を使って、水分と一緒に浮き出てきた汚れを「そっと吸い取る」イメージで当てる

〇耳の穴の奥には、絶対に綿棒や耳かきを入れない

〇頻度は「月に1〜2回」程度で十分(毎日やる必要は全くありません)

「耳掃除をしないと、耳垢が詰まってカサカサ音がしたり、汚く見えたりするのでは?」と心配される方もいらっしゃいますが、前述の通り自浄作用がありますので、入り口だけケアしていれば十分清潔に保てます。

「耳掃除だけ」で耳鼻科に来てもいいの?

患者さんからよく「先生、耳掃除だけで耳鼻科に行ってもいいんですか?恥ずかしくて…」というご質問をいただきます。

お答えします。「大歓迎です!ぜひいらしてください!」

耳鼻科は、耳の病気を治す場所であると同時に、耳の健康と清潔を維持する場所でもあります。
特に、以下のような方は定期的(数ヶ月に一度など)に耳鼻科での耳掃除をおすすめします。

小さなお子様: 耳の穴が狭く、動いてしまうためお家での掃除は非常に危険です。

高齢の方: 自浄作用が低下し、耳垢が奥で固まりやすくなります。

耳垢がベタベタしているタイプの方: 体質的に耳垢が湿っている方は、奥に詰まりやすい傾向があります。

耳鼻科では、専用の顕微鏡や内視鏡で耳の中をハッキリと確認しながら、特殊な器具を使って、安全に、そして痛みのないように耳垢を綺麗に取り除きます。処置の後は「視界が明るくなったようにスッキリした!」と喜んで帰られる患者さんも多いんですよ。

最後に

「耳掃除=気持ちよくてスッキリする習慣」と思われている方は非常に多いですし、その気持ち良さもよく分かります(快感をもたらす神経が耳の穴には通っているためです)。

しかし、良かれと思って続けているその習慣が、耳を傷つけ、外耳炎という痛いトラブルを引き起こしているかもしれません。もし今、「耳が痒くて何度も触ってしまう」「耳掃除のあとに痛むようになった」という症状があれば、触るのをグッと我慢して、まずは当院にご相談ください。

炎症を抑えるお薬を処方するとともに、現在の耳の中の状態を丁寧にご説明させていただきます。

皆様が健やかで快適な毎日を送れるよう、入谷耳鼻咽喉科はいつでも温かく皆様をお迎えいたします。耳のことで少しでも気になることがあれば、どうぞお気軽にご来院くださいね。

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