「昨日まで聞こえていたのに…」突然の耳の不調、突発性難聴を見逃さないでください

こんにちは。
入谷耳鼻咽喉科 副院長の入谷啓介です。
日々の診察の中で、患者様から「朝起きたら片方の耳が詰まった感じがする」「急に耳鳴りがして、電話の声が聞き取りにくい」といったご相談を受けることがあります。
「疲れが溜まっているのかな?」「寝れば治るだろう」と様子を見てしまう方も多いのですが、実はその症状、「突発性難聴(とっぱつせいなんちょう)」という、一刻を争う病気かもしれません。
今回は、知っているようで知らない「突発性難聴」について、その正体と、なぜ早めの受診が大切なのかをわかりやすくお話しします。
突発性難聴とはどんな病気?
突発性難聴とは、その名の通り、ある日突然、片方の耳(稀に両耳)の聞こえが悪くなる病気です。
「いつ、どこで、何をしていた時に聞こえなくなったか」がはっきり思い出せるほど、急激に症状が現れるのが特徴です。
原因は完全には解明されていませんが、耳の奥にある音を感じ取る神経(有毛細胞)への血流が悪くなったり、ウイルスに感染したりすることで起こると考えられています。特に、働き盛りの40代から60代の方に多く見られますが、最近ではストレスや睡眠不足が重なっている若い世代の患者様も増えています。
チェックしたい主な症状
〇突然、片方の耳が聞こえなくなった(あるいは極端に悪くなった)
〇耳が詰まった感じ(耳閉感)がする
〇キーン、ジーといった耳鳴りが始まった
〇めまいや吐き気を伴う
よく「耳に水が入ったような感じ」と表現される方もいらっしゃいますが、もし数時間経ってもその感覚が消えない場合は、注意が必要です。
治療の鍵は「時間」にあります
突発性難聴の治療において、最も重要なことは何だと思われますか?
それは、最新の薬でも特別な設備でもなく、「発症してから受診までの早さ」です。
医学的には、発症から48時間以内、遅くとも1週間以内に適切な治療を開始することが、聴力を回復させるための大きな分かれ道と言われています。時間が経過すればするほど、ダメージを受けた神経の回復は難しくなってしまうのです。
実は先日、診察に来られたある患者様のエピソードをお話しします。
その方はお仕事が非常に忙しく、耳の違和感を感じながらも「週末まで待とう」と10日間ほど様子を見てから来院されました。検査の結果、やはり突発性難聴でしたが、すでに治療の「黄金期」を過ぎてしまっていました。
幸い、内服治療で一定の改善は見られましたが、「もう少し早く来ていただければ、もっとスッキリ治せたかもしれない」と、私としても非常に心苦しい思いをしました。
逆に、翌日にすぐ受診された方は、点滴や飲み薬による治療で、驚くほどスムーズに元の聴力に戻ることが多いのです。
どのような治療を行うの?
クリニックでは、まず聴力検査を行い、どの音域がどの程度聞こえなくなっているかを正確に診断します。
治療の基本は、神経の炎症を抑えるステロイド薬の使用です。これに加えて、血液の流れをスムーズにするお薬や、ビタミン剤などを組み合わせて処方します。
当院では患者様のライフスタイルに合わせ、可能な限り外来通院で寄り添った治療をご提案しますが、症状が重い場合や、めまいを伴う場合には、より集中的な点滴治療が必要になることもありますので、その場合は基幹病院へのご紹介をさせていただいています。
日常生活で気をつけてほしいこと
突発性難聴は、過労や睡眠不足、精神的なストレスが引き金になることが多い病気です。
「体が悲鳴を上げているサイン」とも言えます。もし耳の不調を感じたら、まずはお体をゆっくり休める環境を整えてください。
また、意外と知られていないのが「大きな音を避ける」ことです。
耳の神経が弱っている時に、イヤホンで音楽を聴いたり、騒がしい場所に長時間いたりすると、回復を妨げる原因になります。治療中は静かな環境で過ごすことを心がけましょう。
少しでも「おかしいな」と思ったら
耳の聞こえは、私たちの生活の質(QOL)に直結する大切な感覚です。
ご家族や友人との会話、お気に入りの音楽、街の喧騒。それらが突然半分になってしまう不安は、計り知れないものです。
「この程度の違和感で病院に行ってもいいのかな?」
「仕事が忙しいから、もう少し様子を見よう」
そんなふうに躊躇(ちゅうちょ)しないでください。検査をして何もなければ、それが一番の安心に繋がります。もし病気であれば、一日でも早いスタートがあなたの耳を守ります。
入谷耳鼻咽喉科は、地域の皆様の「聞こえ」の守り人でありたいと考えています。
少しでも耳に違和感を感じたら、ぜひお早めにご相談ください。私たちは、あなたの不安を安心に変えるお手伝いをさせていただきます。
それでは、今日も皆様が健やかに過ごせますように。

